
【企業インタビューvol.9】株式会社QTnet様インタビュー
〜事業に対する定性的な視点を身につける。デザイン思考を取り入れた効果とは〜
Engineerforceは株式会社QTnet様の新規事業創出プログラムMUSUBUにてデザインについての考え方やFigmaの使い方、提案資料の作成方法に関する研修を担当させていただきました。
今回は株式会社QTnet様より伊波様、吉満様(以降、敬称略)のお時間を頂戴し、弊社コンサルティングチームマネージャー小出が研修を行なった竹内を含む3名に今回の取り組みや成果、これから取り組んでいきたいことについてインタビューをさせていただきました。

小出:
本日はお時間いただきありがとうございます。改めましてインタビューの方よろしくお願いいたします。色々お伺いしたい部分はあるのですが主に昨年研修させていただいたMUSUBUプログラムについてお伺いできればと思います。伊波さんからお願いいたします。
伊波:
はい、伊波と申します。YOKAプロ部という部署に所属しているのですが、昨年からの所属なので実はYOKAプロ部での最初の仕事がMUSUBUでした。本業としては社内研修ではなく新規事業の創出をしていて、AI関連やロボティクスなど4つほどの事業を担当しております。
小出:
ありがとうございます。
では吉満さんもお願いします。
吉満:
はい、吉満と申します。私は伊波よりもっと期間が短くて、YOKAプロ部に来てまだ3週間になっていて、新期事業創発グループの責任者をしております。メンバーのディレクションが主な役割で、元々はHRS部(人事)にいたのでその知見を活かしながら貢献していきたいと考えております。
株式会社QTnetとMUSUBUプログラムについて
小出:
ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
早速インタビューに入っていきたいのですが、私が昨年の研修に参加していなかったこともあり、まず気になっているのがYOKAプロ部という名前です。本題に入る前にお2人が所属しているYOKAプロ部とはというところと、それに付随して御社の事業内容などをお伺いできればと思います。
伊波:
まず弊社の説明をさせていただきますと、1987年設立の九州電力の100%子会社になっております。従業員数は昨年1,000名を越えまして今も着々と増え続けています。インターネットサービス(BBIQ、QTmobileなど)を本業としていて、私がYOKAプロ部に来る前はこれらのサービスを担当していました。
ただ通信事業だけだとお客様のニーズに応えきれていないというところと、それ以外の部分で収益を上げていく必要があるというところで2019年にYOKAプロ部という部署が設立されました。「YOKA」にはYes, OK, Agreeの頭文字と博多弁の「よか」が掛け合わされており、「プロ」の部分にはプロフェッショナルやプロダクトといった意味が込められています。
YOKAプロ部には0→1をつくるグループと1→10へ拡大させるグループがあり、昨年まではAI事業グループがあったのですがこちらは部署に昇格したので、現在は2つのグループで活動をしています。
YOKAプロ部のミッションとして「新規事業をつくっていこう」というのは変わらずあるのですが新規事業であればなんでも良いわけではなく、あくまで通信事業を核としてそれにつながるものを創っていこうという部分は特に意識しております。

株式会社QTnet 伊波様
小出:
Yes, OK, AgreeとNoがないのは良いですね。
ありがとうございます。今ご説明いただいたYOKAプロ部の取り組みとして今回のテーマであるMUSUBUプログラムというものがあるという認識なのですが、この部分についても改めてご説明いただくこと可能でしょうか。
伊波:
はい、まず社員全体で1000名を超える中でYOKAプロ部は10名ほどしかいないため、私たちが事業を創っているだけだと会社全体への普及がなかなかできないです。そのため10名で何か新しいやろうとしてもマンパワーが足りず、まずは関係人口を増やして他の社員に対する理解を促進させていく必要があるため、MUSUBUというプログラムをつくりました。そしてMUSUBUの目標としては事業をつくる・人をつくる・文化をつくるという3点が交わる部分を目指して活動しています。
小出:
それでいくと参加者は挙手制になるのでしょうか。
伊波:
そうですね挙手制で、メンバー構成としては若手が手を挙げてくれることが多いですね。
小出:
なるほど。前回も20代の方が多かったのでしょうか。
伊波:
はい、20代中盤から30代前半がボリュームゾーンかなと思います。
小出:
その方々は皆さん「新規事業をやりたい!」という思いで参加されるのでしょうか。
伊波:
これは結構面白くてまちまちで、「新規事業をやりたい!」というメンバーはこれまでの開催ですでに参加されていることが多いです。そんな中で昨年の参加メンバーは「今のままの成長で良いのか」というように今の仕事に危機感を抱いている方が多いです。
デザインを導入した経緯
小出:
そのパターンもいいですね、「自分が動いてなんとかしたい」という思いがある方が参加されていると。そのようなプログラムで昨年、初めてデザインに関連する研修を導入されたと認識していますが、そのきっかけはどこにあるのでしょうか。
伊波:
はい、ここには私の原体験が1つあるのですが、新規事業をつくる時に自分のアイデアを過不足なく他人に伝えることって言語だと限界があると考えています。言語で綺麗に整理した状態で伝えようとするとスマートになりすぎててその事業の真髄が見えなくなっていることがあると思っていて。現在はパワポやワードに落としましょうという文化もありますが、そんな中で文字はなくても良いのでサービスのMVPを共有してみて、それが良いか悪いかというフィードバックを受ける場が欲しかったために今回導入してみました。
小出:
原体験があったんですね、ありがとうございます。
やってみて実際に変化や反応はいかがでしたか?

伊波:
多様な反応がありましたが私がみていた中ですが、昨年までは収益などテキストに起こしやすい部分ばかりに注目してUI/UXに注視してサービスを見れていませんでした。そうすると実際作成した時に「使えるのか?」というサービスになることがすごく多かったんですが、目立った反応として今回はFigmaを活用してUI/UXを先に作ったので、ユーザー視点でサービスを見ることができて、ユーザーの粘着性が高まるためのサービス開発という視点を持てたことはとても良かったと感じています。
小出:
空中戦というか数字の部分だけではなく実際に使ってみたらどうなるんだという意見交換に時間を割くための種ができたという部分が良かったというイメージですかね。
伊波:
はい、やはり上司に説明する時などのためにどうしても定量化できるものでやりたくなってしまうのですが、サービスがユーザーに与える感覚は定量的なものではなく、定性的に「使い続けたいな」という気持ちにさせる、や「使っている自分がかっこいい」と思ってもらうといった感情の部分に、Figmaを使用することでもっと寄り添えるようになったかなと思います。
小出:
ちょうどまさに今プロトタイプを作成するお仕事をしていて、それはユーザーリサーチをするときに実際ユーザーに触ってもらって「これどうですか」という確認をしたいのでそのリサーチ用のモック作成をお願いしますといったものでした。そのお仕事もそうですが、ビジュアルに起こすという作業はとても大切だなと感じています。
ちなみに吉満さんは前回まではHRS部(人事部/教育担当)としてのご参加でしょうか。
吉満:
そうですね、私は2019年のMUSUBUプロジェクト立ち上げから関わっているので変化はかなりみれているかなと思います。
小出:
そうなんですね。それでいうとどのあたりに変化を感じますか?
吉満:
やはり先ほど話していたところが気づいた部分でもあります。当社はロジカルな考え方をベースとして事業を成り立たせるとか施策を考えていくというところがあって、それはそれで大事なことではあるのですが、先ほど話していたUIであったり、感情面の部分は不足していたところになります。逆にいえばロジックさえ合っていればOKといった側面もありました。それが、定性的な要素を取り入れることによってひとつ文化が変わるきっかけになるのかなと感じました。

株式会社QTnet 吉満様
小出:
新しい視点が加わった、というイメージですかね。
竹内さんは実際に研修をやってみてどう感じましたか?自分の部分と参加者の方の変化についてお伺いできればと思います。
研修を実施して感じたこと
竹内:
みなさん本当にFigmaを触るのが初めてだったということで、まず何から教えよう、そして限られた時間の中でどこまで伝えることができるのだろうという悩みがありました。
小出:
ちなみにどのくらいの時間だったのでしょうか。
伊波:
1回3時間×2回分なので6時間ですね。
その中でFigmaをマスターしましょうという無茶振りです。笑
竹内:
そんな中でもみなさん真剣に取り組んでくださって、わからない部分があれば積極的に挙手していただいたりしたのでとても楽しかったですね。
また個人的には、外部の方に研修をさせていただくのは今回が初めてでした。限られた時間の中でどの情報を伝えるか、そしてどのように伝えるかという部分で非常に勉強になりました。このような機会を通じてデザインに触れる方が増えるというのはデザイナーとしても嬉しかったです。
小出:
ちなみに6時間でモック作成まででしょうか?
竹内:
そうですね、ただ前半は代表の飯田による資料作成に関する講義があったので実質おそらく3時間くらいになります。なので伝わり切らなかった方や参加できなかった方には個別で質問対応などをさせていただきました。
もう一つ、普段は社内のデザイナーと関わっているのである意味、型のようなデザインがあったりするのですが、今回はみなさんデザインが初めてということで自分の想像を越えた新たなデザインに出会えたことは、一応私が教えるという立場にありながらも非常に良い経験になりました。

飯田:
なるほど。 USEN&U-NEXT GROUPでは多岐にわたる事業を展開されていますので、社内でAI活用による改善事例を作ることで、外部への説得力も増しますね。
芝田:
そうですね。自信を持って外部に提案できます。
飯田:
プレゼンの説得力も増しますし、話も広がりやすいでしょうね。
差し支えなければ、AIによる業務改善で特に効果が高かった事例などはありますか?私たちも参考にしたいのですが。
芝田:
営業部門が多いので、商談のメモを要約して共有するという用途でかなり活用されています。特に要約機能は時間短縮に大きく貢献しています。
伊波:
改めて考えても超無茶振りですね。笑
小出:
そうですね、では今年はもう少し枠を増やしましょう。笑
話は戻りますが先ほど前半は弊社代表の飯田が資料作成などをする時間があったかと思います。こちらもかなり注力して、資料の流れから一緒に考えさせていただいたという話をお伺いしたのですが、このあたりについてはいかがでしょうか。
伊波:
そもそもMUSUBUの講師は飯田さん含め色々な方にお願いしているのですが、事業の方向性について「こうしてほしい」といったものはほぼないです。どちらかというとMUSUBUというプログラムに関するお話だけさせていただいて、何を話すかは結構フリーだったりします。自分に活かせるところは活用して、活かせないと思ったところは「なぜ活かせないか」という理由をきちんと持っていれば問題ないというように伝えています。
小出:
なるほど、そうすると全12回のプログラムは当然被った内容も出てくるという認識でしょうか。
伊波:
おっしゃるとおりです。
小出:
ありがとうございます。そうするとみなさん講義時間外で事業を作成していくのでしょうか。
伊波:
そうですね、MUSUBUのプログラムはStep1とStep2に分かれておりまして、竹内さんと飯田さんにご協力いただいたのはStep1になります。ここは多様なインプットをするフェーズになっていて、基本座学で方向性を定めてもらうのをゴールとしています。そして学んだことをStep2で実際に活用してチームで1つのビジネスアイデアを実現レベルまで持っていきましょうという流れになります。
なので講義で聞いた内容を講義時間外で活用いただいて自分の個人の事業アイデアを考えてもらうシーンもあるのですが、本格的に活用するのはStep2からになります。

小出:
なるほど、確かにStep2で作成されたモックを修正させていただいた記憶があります。この際のモックは竹内さんの講義後に受講者の方が作成したものですか?
伊波:
はい、そうです。
小出:
アウトプットがすぐできるのはいいですね。竹内さんはそのアウトプットを見てみてどうでしたか?
竹内:
想像以上にしっかりしたモックもあって、学ぶ方の意欲が本当にすごいなと。もしやらされていたら「それっぽい」アウトプットになってしまうことが多いと思うのですが、自分がこれをやりたいという意志が伝わるモックを作成されていたので、参加者の意欲を感じました。
伊波:
私はFigmaを綺麗に使うことをゴールとはしていなくて、あくまでコミュニケーションツールとして頭の中を全てビジュアルに落とし込むように伝えていたので、デザイナーの方にはお見苦しい部分はあったかなと思いつつ、私の目的は達成できたと感じています。
小出:
新規事業担当者やいわゆるプロダクトオーナーなど事業をつくる方はあくまでデザイナーではないので綺麗につくれる必要は全くないと思っていて、伝える方法として言葉やテキストだけではない方法を持っているかどうかで変わってくるなと感じていて、その手段が1つ増えたのは大きいですね。
伊波:
はい、そう感じます。
小出:
ありがとうございます。これまでMUSUBUについてお伺いしてきたのですが、お二人にさらにお伺いしたいのは、これからのMUSUBUプログラムがどうなっていくのでしょうか。ビジョンのようなものがあればお伺いできればと思っています。
これからのMUSUBUプログラム
吉満:
あくまでMUSUBUは、従業員のチャレンジ精神の醸成とか行動改革といった目的の1つの手段でしかないと思っています。半年間という時間を部署の方々からもいただくので部署にも、会社にも恩返しをできるようにやっていきたいと考えています。そして私たちには新規事業をつくっていくというミッションがあるのですが、やはり既存の事業では得られない経験や思考や人に触れる機会が多いのでそういったもので還元していきたいです。
そしてこの新規事業をつくる機会を通して新たな刺激を得てもらって学習習慣の定着、そしてチャレンジする組織文化の醸成の2つに寄与するキープレーヤーを育成することが今年の目標になります。
学習習慣の定着についてですが、自己研鑽していますか?というアンケートを全社で実施してみると半分くらいの方がしてますと言えるくらいにはなっています。ここの数字を改善していくのはもちろんですが、この自己研鑽について詳しくみると自分の今の業務の深掘りというのが大半だと思います。専門的に学んでいくことは大切だと感じる一方で、横に広げる動き、つまり揺さぶりが大事だと考えているのでMUSUBUに挑戦し、違った刺激を受けることで揺さぶりの学習に興味を持ってもらったり、新たな自分のキャリアを考えてもらうことのきっかけになればと考えています。
もう1つ、チャレンジする組織文化についてですが、アンケートベースで徐々に浸透してきています。ただ、まだまだ低い数字だと感じているのでMUSUBUを通じてしっかりと自身のマインドセットをつくっていって欲しいと思います。
そしてこれらの両輪を兼ね備えたキープレーヤーとして既存事業で活躍してくれるもらえる人材をつくっていく。そしてゆくゆくはYOKAプロ部でも活躍してくれるようになってもらいたいというのが今回の目指すところになります。
小出:
学習習慣の定着とチャレンジ文化の醸成に挑戦していきたいと。ありがとうございます。伊波さんはいかがですか?
伊波:
僕も揺さぶりというのがすごく大事だと考えていて、今年はより揺さぶっていくために大きくプログラムを変更しました。Step1→2の流れを無くして、MUSUBUに参加した瞬間からチームを作成して皆で事業を考えましょうという取り組みなります。昨年までは前半座学、後半アクションだったのですが、まずアクションしてみないと自分たちが抱えている課題が見えないというのがわかってきたので、アクションしながらつまずきポイントでインプットをいれていくという形の講義形式になります。なので座学はほぼなくなり、アクションをしていく中で例えば「顧客の課題がわかりません」となればそこで課題発掘に関するインプットをしましょう、というようなイメージです。
小出:
それは素晴らしいですね。そうすると極端な話メンターのような方がずっとチームについているようなイメージでしょうか。
伊波:
はい、その通りです。
どうしても既存の事業だと過去の事例を学んで、失敗しないように積み上げてからアクションを起こすという流れになりがちです。もちろんこれは正しい動きなのですが、新規事業の場合はそれをしていると置いていかれるので、不安定さを楽しむというイメージでみんなに揺さぶりをかけようと思います。

小出:
ちなみに期間はこれまで同様6ヶ月でしょうか?
伊波:
そうですね、6ヶ月になります。
小出:
それは楽しみですね、ありがとうございます。
僕がお伺いしたかったことは大体聞けたのですが竹内さん何かありますか?
竹内:
そうですね、今年のプログラムについて気になっています。
前回のプログラムでは個人で考えた後にStep2としてチームで考えるような流れになっていたかと思います。私も実際にアイデアを考える際、1人だと視野が広がらないことがあり、チームと話すことでよりブラッシュアップが進んだりするのでそういう視点でも今年の取り組みはとても楽しみだと感じています。
小出:
ちなみに今回、表現する手段の1つとしてFigmaを活用する選択をされて弊社にご依頼いただいたかと認識していますが、どのような基準でご依頼いただけたのでしょうか。
伊波:
その視点でいくとMUSUBUの取り組みに賛同していただけそうかというところを大切にしておりまして、その点飯田さんは非常に前のめりになっていただいたので依頼させていただきました。Figmaを選んだというよりは飯田さんを選んだという形ですね。
小出:
それは嬉しいです。ありがとうございます。
それでは本日は以上とさせていただきます。お時間いただきありがとうございました。

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